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吉澤 厚文*; 大場 恭子; 北村 正晴*
人間工学, 54(3), p.124 - 134, 2018/06
東日本大震災に端を発し、東京電力福島第一原子力発電所は、放射性物質を大量に放出する過酷事故となったが、その後冷温停止状態を達成した。しかし、福島第一原子力発電所事故に関するさまざまな機関による調査報告書は、事故に至った過程に着目している一方で、事故の拡大の防止や被害の減少についてはほとんど着目していない。本研究は、福島第一原子力発電所の3号機における、冷温停止状態達成までの過程に着目した。公開データに基づき、事故の発生から冷温停止状態達成に至るまでの時列を整理し、それらを人間工学的視点によって行為群を分類した上で、状況の回復に重要な意味をもつ対処をm-SHELモデルを援用して分析した。このようなアプローチにより、状況の回復に必要な行為に関する新たな教訓を得た。
吉澤 厚文*; 大場 恭子; 北村 正晴*
人間工学, 54(1), p.1 - 13, 2018/02
複雑化した社会技術システムの安全を確保する概念として、Hollnagelは2種類のアプローチを提言している。すなわち、リスクを低減するSafety-I並びに成功を拡張するSafety-IIという安全の概念である。また、Safety-IIを具現化する手法としてレジリエンスエンジニアリングが提唱されている。本研究は、これまで失敗や過誤に注目して分析されてきた福島第一原子力発電所事故対応の「さらなる事故進展を食い止めた」側面に着目し、レジリエンスエンジニアリングを用いて3号機の注水回復の事例を分析した。その結果から、既存の事故調査の事故対応の捉え方と異なった視点をもつ安全性向上の学習の在り方を明らかにした。